Q and A of nacazawa.com













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Q 建築家・建築士の違いは何ですか?

A  何やら堅苦しい感じですが、下記はWikipediaの建築家の記述です。
  「建築家(けんちくか)とは、自らの美学的見地・論理的分析にもとづいて建築物を
  設計し、実現に必要な知識や折衝能力・監督能力を有する人のことである。すな
  わち、計画・意匠面の考案者・著作者であるとともに、実現の上での技術的側面を
  統括・指揮する責任者である。」
  各専門家を統括して映画を完成させる映画監督のようなイメージでしょうか。
  さらに補足すると、単体としての建物を設計する技術能力だけではなく、つくる建物
  が属している周りの社会環境に与える影響もしっかり考えること。またその建物が
  つくられる過程と結果が地球自然環境に与える影響をも考慮すること。なども建築家
  には要求されています。
  建築士とは建築士の資格免許を持つ人のことです。建築士には構造計算や設備が
  専門の方もいます。建築士は工学的、技術的な面がピックアップされた呼称と言え
  ると思います。
  つまり、Q.の「違い」とは、建築へのかかわり方の違いです。建築家のほうがより多
  面的に建築にかかわると言えるでしょう。また建築をみる視点がより総合的とも言
  えるでしょう。

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Q 建築物はだれのもの?

A  もちろん建物の所有権者に所有権があるのは言うまでもありません。が、たとえ
  個人住宅であってもその建物が属する地域社会の中のひとつの構成要素である
  という面があります。なので、周りの地域社会との関係から建築をみる視点もあります。
  景観という1面からとらえても、個人の所有物である個人住宅も地域の景観をつく
  る責任があると思います。
  また人工的な建物は多かれ少なかれ自然環境には負担になっている面がある
  のです。その建物があることでそこの自然環境に良い影響を与えているということ
  は難しいことですが、なるべく地球環境に負担にならない作り方、存在の仕方 を
  探求すべきと考えています。このことは使う材料の選択に関係していきます。

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Q 建築家がかかわると何が違ってきますか?

A  工務店と建築主だけでも建物はつくられますが、その場合には設計を工務店の
  スタッフが行います。しかし、そこに第3者として建築家がかかわることで大きな
  メリッ トが生まれます。
  まず建物ができていく流れを簡単に整理してみます。
  ①つくる建物を考える。アイディアを練る。
  ②考えをまとめる。きちんと設計図面をつくる。
  ③考えを伝える。
  ④つくる約束をする。
  ⑤実際につくる。
  ①から⑤のなかで、建主との間にはきちんとしたコミュニケーションを行うのは
  もちろんです。 建築家は、まず上記の①②の仕事を行います。
  建築家は設計に対して、建主も建築家も納得いくまで時間をかけます。そして
  図面を細かく描いて、建主にも確認していきます。そうすることで完成状態を事前
  に明確にできるようになります。
  次に③の考えをしっかり工事担当者に伝える作業がたいへん重要になります。
  施工者に伝わったことしか実現されないので、より正確に考えを伝えるためにも
  細かい図面が必要です。
  建築家と工務店との間には金銭のやりとりがないので、⑤の段階では、建築家
  は建主の目で、さらに客観的な立場で工務店の仕事振りを見極めつつ、見積もり
  のときも、工事開始後も、設計通り行われているかを監理します。
  ここでは、設計者と施工者が同じ企業に属さないことがポイントだと思います。
  (第3者の建築家が工事をチェックすることを監理といいます。)



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Q 建築家の設計とはどんなですか

A  設計作業には2つのおおきな流れがあります。
  基本設計と実施設計です。
  前出の、建物ができていく流れで、
  ①つくる建物を考える。アイディアを練る。
  ②考えをまとめる。きちんと設計図面をつくる。
  ③考えを伝える。
  ④つくる約束をする。
  ⑤実際につくる。
  上記の①と②が設計作業です。(基本設計と実施設計があります。)
  ③と④と⑤が設計監理作業です。(工務店の工事管理とは異なります。)
  基本設計は、建て主としっかりやりとりしながら、建物をどのような方針で
  計画するのか、建物の形と間取りを考えて、アイディアをまとめて建て主
  に提案します。この基本提案は何回か繰り返されることが多いです。
  基本設計は人の動き、建物の外と内の関係、光のはいり方を決定して
  しまいますので重要な作業です。基本設計が良くないと良い建物には
  ならないとも言えます。
  建て主をうならせる基本設計ができるかが建築家の職能の1つです。
  基本設計が確定しましたら、実施設計にはいります。
  実施設計では、細かい寸法など適宜建て主と共有しながら図面にします。

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Q 建築家の基本設計には何故そんなに時間がかかるのですか?

A 設計作業は、大きく2つの段階があります。基本設計と実施設計です。より
  具体的に細かいディーテイルを設計をするのが後者ですが、実は基本設計
  はより大切なことです。設計の価値の半分以上はあると思います。
  基本設計では、表現された図面枚数にしたら少ないかもしれません。しかし
  基本設計で空間の大枠が決まってしまいます。平たく言えば住宅でしたら、
  間取りが決まってしまうのです。人の動線が決まりますし、美しさと面白みの
  ある空間になるかどうかを決める作業です。
  ですから、基本設計のときには色々な可能性を考えます。建て主の目に触れ
  ないスケッチなどをたくさんします。いきなり最終案が出るのではありません。
  建主と良く相談しながら、ときには建主の言外の願いを考慮したりもします。

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Q 建主の言外の願いとは何ですか?

A 設計作業は、建て主との共同作業です。お互いに情報をやりとりしながら
  進めるわけですが、言葉で説明するしかないようなことも時々あります。その
  言葉によっては、受け取り手側の解釈の巾が大きいこともあったりするので、
  建て主の意図からポイントがずれないように理解したいと思いますし、言葉
  の底にある真意を汲み取れるよう注意深くコミュニケーションできたら良いと
  思いますね。
  また言葉にさえできない願いもあると思います。意識化されてないとも言え
  ます。きっとそれは建築家の言葉にある「空間性」ということにつながること
  が多いのではないかなとも思うのです。
  建て主が望む空間が実はいままで見たこともない空間だったりすることも
  ありそうですね。新しい提案に出会って「これだ」と思える体験ができたら、
  きっと素敵な家になるでしょう。  

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Q 建築家は敷居が高くて声をかけにくいのですが

A 私は設計士ではなく建築家として仕事やってます。なんて言われると、気軽に
  声かけしにくいですよね。また、何となく建築家は気難しいイメージがあるかも
  しれませんね。 建築家は建主の意見を十分に聞いてくれるのかな?という疑
  念もあるかもしれませんね。それから建築家に依頼すれば本当に良い提案を
  してもらえるのだろうか?とも思われるでしょう。 
   そこで、中澤建築工房では、
 ①初回は新築でも、改修でも、住宅以外でも無料で相談にのります。そこでいろ
  いろお話したりして、私と会っていただいた後でじっくり検討していただき、私か
  らの提案を希望されるかどうかを決めてください。
 ②私からの提案を希望される場合、まず基本設計契約を交わします。
  設計契約は2段階に分けています。1回目の提案をするための基本設計契約と
  1回目の提案を受けたのち、私の仕事に納得いただけたら、さらに設計を進めて
  いくための「設計及び監理契約」です。
  2段階に分けたのは、1回目の提案で私の基本設計が気に入らなかった場合、
  その時点で設計作業をおしまいにできるためです。基本設計契約には費用が発
  生します。この費用は「設計及び監理契約」が4カ月以内に締結された場合には、
  「設計及び監理契約」の費用に充当されます。
 ③基本設計契約後、法的な条件や現地の環境調査を行い模型と図面などで1回目
  の提案を行います。(地盤強度の調査は次の段階です。)そこまでの私とのやりと
  りのなかで、本格的に設計依頼するかどうかをご判断いただければと思います。
  ちなみに「設計及び監理契約」の後、建て主が納得するまで提案をしますが、1回
  目の提案をすすめていくと最終案が大きく変わることも結構あります。


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Q 建築家の設計料は高くないですか

A  工務店の設計施工の場合と比べたら設計料が高いと思われていることがある
  かもしれません。1件の住宅にかかる設計作業量は、監理も含めて大まかな
  ところ床面積1㎡あたり1.2人/日くらいです。100㎡の住宅なら延べ約120人/日分
  の設計作業量が必要です。値段が高いか安いかというのは、それだけの作業量
  を投入するかどうかです。
  建築家の場合、設計にはきちんと作業量を確保しましょうという立場です。
  決められた予算内で、設計に必要なエネルギーを配分したほうが費用対効果の
  高いものができると考えています。

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Q 建築家は何故そのように細かく設計するのですか

A  それは工事が完成した状態を、なるべく正確に事前に建主と工務店に理解して
  いただきたいからです。完成状態の理解が建主と設計者と工務店とで共有でき
  ていることが必要です。細かい設計でなくては、工事価格が適正かどうかの根拠
  も明確にはなりません。例えば建築家の設計の場合、照明器具・水栓金具・ドア
  の錠など型番まで指定されるので、工事完了後に不確定部分での追加請求は
  ありえません。(工事中に建主の依頼で、設計変更した場合には追加請求がありえ
  ます。)細かく設計しないということは、明確にされてない部分の材料や細部の様子
  は施工者(工務店)に委ねることになりますので、完成後にイメージと違うということ
  もありえますし、工事中に建主が細部を指定した場合には、それが増額と判断され
  て竣工後追加請求になることもありえます。したがって工事契約前になるべく細かい
  ところまで明確にして設計図面にすることは、建主の要望を明確にして、工事として
  実現するためにも、未確定部分の追加請求をさけるためにも必要なことではないで
  しょうか。

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Q 建築には相場より安くて良いものはありますか

A  建物は完成品を買う場合以外は、つまり建主と設計者と施工者が協力して
  建物をつくる場合には、安くて良い物はありえないと思います。
  既に完成されているものが、なにか訳ありで相場より安く売り出されるという
  ことはありえます。
  建物は材料と人件費で成立します。その材料も人件費も相場で価格がきまり
  ますので、建物には適正価格が存在します。工務店の見積もりで差がでるの
  は、主にその工務店の組織規模からくる工務店の経費の差が大きいと思われ
  ます。
  

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Q 建築家に依頼すれば安くて良いものができますか

A  この質問の真意を、建築家がかかわれば費用対効果が高い建築が可能
  ですか?と読み替えさせていただきましょう。答えは、設計に必要なエネル
  ギーをしっかり使うことで初めて計画の内容が洗練されたものになります。
  良い計画なくして良い結果(建物)は有り得ません。
  良い計画には良い予算配分も行われます。  
  私は限られた予算のなかでいかに質の良い建物をつくるか、効果的な建物を
  をつくるかのチャレンジをいつも心がけています。
  何をもって質とするか?
  何をもって効果的とするか?は建主の価値判断によるところも大きいですね。

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Q 設計が違えばそんなに空間も違いますか
  そんなに空間が与える気持ち良さが違いますか?

A  違います。
  その差は大きいと思います。
  平たく言えば、良い設計に出会えれば設計費用は決して高いものではありません。
  人が何十年とそこに身をおき、何度も同じ空間体験をして、それでも飽きのこない
  空間は可能だと思います。






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Q 建築のディーテイル(詳細)って何ですか

A 設計図面を細かく描く作業は時間のかかるものですが、必要なことです。
  建物や部屋の全体を見たときの印象と各部分の詳細との間には実は大きな関係
  があります。私達の感覚は、あまり意識しなくても部分と全体の関係性を読み取っ
  ています。
  例えばある部屋の窓のある壁を見たとき、窓の位置の検討はもちろん、窓の枠の
  付け方もその壁全体の印象に大きな影響を持ちます。いくつかの考え方によって
  壁の見え方が違ってきます。具体的に言いますと、窓枠の太さををかえるだけでも
  印象は変わります。ときには窓枠の線がないほうが良いという考え方もあります。
  窓枠の線が消え、さらには動く障子の枠の線さえも室内から見えないようになった
  ら、その壁は窓と言うより壁にきれいな穴が開いた状態にみえるようになります。
  そのときには窓自体の存在感は消えて、きれいな穴をもった壁の存在感が強調
  されたものになります。そんな見え方も気持良さにつうじているのです。
  そんな、いろんな気持よさの実現のために時間をかけて詳細を設計します。

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Q シンプルであることの価値とは何ですか?

A シンプルとは、何かと何かが気持ちよく揃っていて、1つのまとまりを持ったイメージ
  をつくっていることだと言えますね。目に見える情報がよく整理されていて、1つのま
  とまりを持ったイメージになっていると、気持よく感じるのではないでしょうか?
  人間はいつも目に映るものを個々の要素としてではなく、全体やまとまりとして知覚
  する性質があるので、この性質に明解に応えてあげる設計が基本になるのが良いと
  考えています。
  かと言って私は装飾を否定しているわけではありません。
  気持ちよく整理された設計が生活の舞台になり、
  その空間は暮らしのなかで住む人の個性で味付けされていくのです。

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Q シンプルであることとストレスとの関係は?

A 情報や要素が整理されていくと目に見える物の主張が和らいで、
  モノから感じてしまうノイズ感覚が小さくなります。さらに整理を
  つきつめていけば、モノのあり方が非日常的なほど抽象的にまでなっていきます。
  抽象的であることとは、
  特定の意味に限定されない。
  人の見方感じ方によっていろいろ違ってみえる。
  こちらの気分によって違って感じる。
  これは気持ちの方向性を指図しないことだと思います。
  揺れ動く気持ちの幅に応えるものです。
  人の気持ちを受容する許容度が高いのです。
  この抽象性によって人は現実世界から感じているストレスから解放されやすくなる
  とも言えそうです。

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Q 使用材料はどのように決めますか?

A 人間の手で触ったときの相性のようなものを大切にしたいと思います。そして建主
  だけではなく、つくる職人にとっても健康的な素材を選びたいです。その材料を切
  ったときに舞い上がる切り粉を吸ったらどんな感じなのかも考慮したいですね。
  具体的には木材でしたら、接着材で貼り合わせた集成材ではなくムク材が基本で
  す。集成材や合板は材料の有効活用・寸法の安定性の機能面から使用すること
  はあります。しかし、基本はムクの木材です。
  他の具体例では、断熱材はなるべく羊毛を使うようにしています。
  吸放湿性があってムク木材とのなじみが良いと思います。羊毛は有機物なので
  虫やカビに弱いのではという考えもあります。(そのことに対してはなるべく毒性の
  少ないホウ酸などで処理されてます。)
  では無機繊維系のものはというと放湿性に難ありだそうです。無機材でも適度な
  水分でカビが生えます。羊毛は施工者にもやさしいですし、ムク木材や羊毛断熱材
  は生産されるときも廃棄されるときも環境に負担の少ない素材だとも言えます。

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Q 木造住宅の耐久性のポイントは何ですか?

A 木の骨組みをしっかりつくることはもちろんですが、木造では、水分の処理
  の仕方がおおきなポイントです。木は水に濡れても乾燥できる状態であれ
  ばあまり問題ありません。しかし乾燥している時があまりなくて、いつも湿
  気の多い状況だと強度的に弱体化していきます。
  特に注意すべきは、完成すると表からは見えなくなる壁内部です。そこで
  の湿気の状況を適度に保つためには、内部結露が起きることは避けなけ
  ればなりません。壁内部は見えないので管理ができませんから、はじめか
  ら結露がおきにくいつくり方をすべきです。



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Q 空間(空間性)とは何ですか?

A 空間の文字どおりの意味は、何もないスキマのことですが、具体的には、床・壁・天
  井に囲まれた空洞部分のことや、建物と建物の間のスキマのことです。あたりまえ
  ですが、そのスキマの形はスキマのまわりのモノによって決められます。建築では
  この目に見えないスキマの形が大きな意味を持ちます。
  実は建築家の1番のテーマは光です。そしてモノのスキマ、つまり空間です。光が
  なければ何も見えませんし、空間がなければ光もとどきません。
  素材でつくられるモノの形にスポットをあてて、目に見えるモノとしての豪華さを追
  求した長い歴史がありましたが、今、物質のまわりの空間とそこにある光に関心が
  到達しています。スキマの形の大きな意味とは、スキマは光と人の動線になること
  です。光のスキマへの入り方・視線の通り方で空間の美しさが決まります。人の動
  線のあり方が空間の面白さに大きく影響します。

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Q 飽きのこない建築とはどんなものですか?

A 人間がお金をかけてつくった作為的なものより、そこら辺に転がっている石ころの
  ほうが格段に美しい。ということがたくさんありますね。幸い建築には機能性が絶
  対必要条件なので、美しくない建物もあるわけです。
  誤解を恐れずに言えば、美しく、面白いことが問われることで、飽きのこない建築
  がつくれると思います。もちろん機能性確保は当たり前です。